中東情勢と設備
FIDESレター 2026年6月号
『遠い国の問題』が、なぜ日本に影響するのか?
中東地域を巡る緊張が高まっており、ニュースなどでも盛んに目にする機会が増えています。一見すると、日本とは遠い地域の出来事のようにも感じられますが、私たちの生活や設備業界にも大きく関係しています。原油価格の上昇は、ガソリン価格だけでなく、各資材や物流コストにも影響を及ぼし、価格や納期にも波及するおそれがあるので、注意が必要です。
\ どうして中東情勢の悪化で日本の原油価格が上昇するの? /
理由① 物流の大動脈『ホルムズ海峡』の通航リスク
2026年2月28日、米国・イスラエルがイランへの大規模攻撃を開始し、イランはその報復としてホルムズ海峡の船舶通過を実質封鎖しました。ホルムズ海峡は、中東のペルシャ湾と外洋を結ぶ非常に重要な海峡です。中東諸国から輸出される原油の多くがこの海峡を通過しており、世界全体の海上輸送原油のおよそ2〜3割が通るともいわれています。
日本は原油の多くを中東地域に依存しているため、日本が輸入する原油の大部分がホルムズ海峡を通ることになります。つまりこの海峡で混乱が起きると、日本経済にも大きな影響を与えることになります。
理由② 中東産油国の生産・輸出リスク
サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、イラク、イランなどの中東産油国で、油田・製油所・港湾・パイプラインなどのエネルギー関連施設に被害や操業制限が出ると、世界全体の原油供給量が減る懸念が生じます。そうなると、実際に供給が止まっていなくても、市場では「今後足りなくなるかもしれない」という警戒感が高まり、原油価格に“地政学リスク分”が上乗せされます。
『地政学リスク』とは…
国際情勢の悪化や地域紛争などによって、政治的・軍事的な緊張や紛争が起こり、経済活動や物流、資源供給に影響が出る不確実性のこと。
\ 今、『ナフサ不足』が問題視されているけど…『ナフサ』って何? /
設備資材にも欠かせない存在、『ナフサ』
原油から作られるものは燃料だけではありません。さまざまな石油化学製品の原料である『ナフサ』にもなっています。ナフサは、原油を精製する過程で取り出される石油製品の一種で、私たちの身の回りにあるプラスチック製品や合成繊維、ゴム、接着剤、塗料などの石油化学製品をつくるための重要な原料です。
ナフサはそのまま使われるのではなく、ナフサ分解工場で化学反応によって、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの基礎製品に作り替えられます。これらはさらに加工され、プラスチック、合成繊維、合成ゴム、塗料、洗剤など、さまざまな製品の材料になります。ナフサは、多くの工業製品の出発点となる原料といえます。
設備工事で使われる資材にも、こうした石油由来の素材は多く含まれています。たとえば、電線の被覆材、樹脂製の配管、配線保護管、断熱材、接着剤、シーリング材、ビニルテープ、空調機器の樹脂部品、梱包材などです。そのため、原油やナフサの価格が上昇すると、これらの資材価格にも影響が及ぶ可能性があります。
ナフサは他にもゴミ袋やペットボトル、シャンプーボトルや衣類などの合成繊維など、私たちの日常で利用しているものにも使われています。
\ 設備工事や製品の納期・価格への影響は? /
工事や製品に影響が出る可能性があります
中東情勢の悪化は、原油価格の上昇を通じて、設備工事にもさまざまな形で影響を及ぼす可能性があります。原油価格が上昇すると、まず影響を受けやすいのが燃料費や輸送費です。設備資材は、メーカーから販売店、そして工事現場へと運ばれるまでに、トラック輸送や海上輸送など複数の物流を経ています。燃料価格が上がれば、こうした輸送コストも上昇し、結果として資材価格や工事原価に反映されるおそれがあります。
また、前述したとおり、原油やナフサの価格が上昇すると、設備資材価格にも影響が及ぶ可能性があります。設備工事では、必要な資材や機器がそろわなければ、予定通りに工事を進めることが難しくなります。たとえば、空調機器や照明器具など、一部の部材の入荷が遅れるだけでも、工程全体の見直しが必要になる場合があります。また、代替品の検討や仕様変更が必要になることもあり、発注から施工までに通常より時間がかかるケースも考えられます。
中東情勢悪化による設備工事への影響・懸念点
①資材・機器価格の高騰
輸送費や輸送コストの上昇、ナフサの価格上昇によって、資材や機器価格が高騰する
②納期長期化
原材料の調達遅延によってメーカーの生産にも影響し、納期が長期化するおそれ
③工事計画への影響
資材の入荷時期に合わせて施工日程を調整する必要性があり、代替品の検討や仕様変更が生じることも
状況によっては、代替機種の提案や工事時期の調整など、柔軟な対応が必要になる場合もあります。設備更新や修繕をご検討の際は、余裕を持った計画と早めのご相談をされることをおすすめします!
《フリートーク・コラム》「気候変動とともに変わる暮らし」
近年、「気候異常」や「異常気象」という言葉を耳にする機会が増えています。日本では猛暑や豪雨、大型台風が頻発し、世界各地でも森林火災や干ばつ、洪水など深刻な被害が相次いで発生しています。これらの背景には、地球温暖化による気候変動があると考えられており、もはや環境問題は遠い未来の話ではなく、私たちの日常生活に直結する問題となってきていることが分かります。
このコラムを執筆している五月上旬も、各地で二十五度を超える夏日が観測されています。先日、食材を買いにスーパーへ行った際には、冷やし中華や冷やしたぬきなどの「ひんやり商品」がすでに並んでおり、例年より早い夏の訪れを感じました。季節商品の展開時期からも、気候の変化が私たちの暮らしに影響を与えていることが分かります。
気象庁によれば、今年の夏は全国的に平年より気温が高く、厳しい猛暑になる見込みだそうです。特に七月後半から八月にかけては、記録的猛暑となった昨年に匹敵する暑さが予想されており、地域によっては四十度を超える「酷暑日」が発生する可能性も指摘されています。
私が子どもの頃、今から約三十年前の夏は、暑い日でも三十五度を超えることは珍しかったように思います。夜になれば窓から涼しい風が入り、熱帯夜も数えるほどしかありませんでした。紫外線の強さも、現在ほどではなかった印象です。しかし近年は、日差しの強さや気温の高さが明らかに変化しています。以前は女性が使うイメージの強かった日傘も、今では子どもや男性が使用する姿をよく見かけるようになり、日焼け止めクリームは夏の必需品となり、屋外で長時間過ごした後に化粧水や乳液で肌をケアする男性も増えているといいます。時代の変化とともに、暑さ対策の常識も大きく変わってきたことがわかります。建設現場や工場などの屋外作業の現場では、熱中症による死傷者数が年々増加傾向にあります。そのため、空調服やネッククーラーの着用、こまめな休憩や塩分補給、暑さ指数を測定する熱中症アラーム機の設置など、さまざまな対策が進められています。今では「暑さとうまく付き合うこと」が、日々の生活や仕事の中で大切になっているのだと感じています。
私自身、気候変動は決して特別な問題ではなく、すでに私たちの暮らしの中に深く関わっているものだと感じています。毎年のように続く猛暑や異常気象を前にすると、「昔とは違う」と実感する場面が増えました。だからこそ、無理のない範囲で環境に配慮した行動を続けていくことが大切なのではないでしょうか。
便利さや快適さを求めながらも、自然と共に暮らしていく意識を持つこと。その積み重ねが、これからの未来を少しずつ変えていくのだと思います。
今月の担当は…
営業チーム
筒井 知明
《それってドーシテ?》紫陽花のドーシテ?
《社長コラム》
AI時代だからこそ、問われる”人間力”
代表取締役社長 細矢 充
『今日の会議内容を整理してほしい』
『この文章を、高校生にも分かりやすく書き直してほしい』
『工事の成績評価点を分析してほしい』
相談相手は“チャッピー”こと、ChatGPTです。口下手な私にとっては実に心強い存在でもあります。お客様訪問時の会話の切り出し方や話題づくり、時には乾杯の発声の挨拶文まで相談しています。もちろん、すべてがそのまま使えるわけではありません。しかし、「なるほど、そういう伝え方があるのか」と気付かされることも多く、ありがたい存在です。
私がChatGPTに初めて触れたのは、2023年1月のことでした。当時はまだ使い勝手も十分とは言えず、「これは本当に使えるのだろうか」と半信半疑だったことを覚えています。しかし、それからわずか3年。AIの進化のスピードは、私たちの想像をはるかに超えています。今では、困った時につい相談したくなる存在になりました。思考を整理してくれるだけでなく、自分では気付かなかった視点や知識を文章として提供してくれます。もっとも、全てを鵜呑み知ることは出来ません。最後に責任を負うのは使う本人です。AIに頼りながらも、最終的には自分の言葉として伝える。その距離感が、心地よく感じられます。
今では仕事だけでなく、私生活でもかなりお世話になっています。体調が優れない時には“お抱えドクター”のように相談し、時には還暦を過ぎた男の服装を考えてくれる“専属スタイリスト”にもなってくれます。気が付けば、日常のあらゆる場面で活用している自分がいます。「家族との会話より多いのではないか」と言われれば、返す言葉もありません。それほど、私にとって身近な存在になっています。
では、ローテクで労働集約型と言われる建設業において、AIが現場を支える時代は来るのでしょうか。建設現場は、一つとして同じものがありません。天候や立地条件、さらには人の技量によって、結果が大きく左右されます。だからこそ私たちは、これまで“人の力”によって品質を支え、信頼を積み重ねてきました。一方で、担い手不足や技術継承の問題は、待ったなしの課題です。さらに、安全・品質・コストについても、これまで以上に高いレベルが求められる時代になりました。従来のやり方だけでは、限界が見え始めているのも事実です。
技術は進化します。しかし、仕事の本質は変わりません。「AIなんかに現場管理ができるのか」「ロボットに現場が分かるのか」と感じる方も、まだ多いかもしれません。現場上がりの私自身も、すべてをAIやロボットに任せられるには時間が掛かると感じます。それでも、AIによって我々の生活や仕事に大きな可能性が広がっていることは紛れもない事実。こうした状況の中で、AIは人に取って代わるものではなく、“人を支える道具”として価値を発揮してくれると信じています。むしろ、AIが身近になればなるほど、現場での段取りや気配り、見えない部分への配慮、そして新しい知識を取り入れながら正しい判断を下す“人間力”の差が、より如実に表れてくると考えます。AIは情報を整理し、知識を提供し、思考を深めることを支援してくれます。その能力には恐怖さえ覚えますが、大切なのは、AIを恐れることではなく、それを使いこなす力を私たち自身がどう身に付けていくかではないでしょうか。
人の力とテクノロジーを融合させ、新たな価値を創造していくこと。それこそが、これからの建設業に求められる姿であると確信しています。
そして今日も、チャッピーに問いかけます。
「フィデスレター7月号のコラムのネタを提案して」と。



